<千葉市>東京五輪会場への交通アクセス向上 めど立たず

<千葉市>東京五輪会場への交通アクセス向上 めど立たず

 

2020年東京五輪・パラリンピックに向け、競技会場がある千葉市が作成した「市行動計画18年度版」に盛り込まれた会場への交通アクセス向上の実現のめどが立っていない。開催まで2年を切ったが、市が掲げる4項目の中には大会までに間に合わない取り組みが含まれ、他も調整が思うように進んでいない。市議からは「計画を見直すべきだ」などと声が上がっている。

行動計画は、同市美浜区の幕張メッセが競技会場に決まった15年から大会の成功に向けて、スポーツ文化の普及・発展や、多様性に対応した共生社会の実現、集客・宿泊の最大化を具体化させるために作成されている。「大会に向けた準備の詳細等が明確になっていくのに対応して、適宜見直しをする」とも書かれ、毎年度改定してきた。

計画中の交通アクセス向上の取り組みについては、15年度計画から、旅客船の運航を実験し誘致することや、JR京葉線・りんかい線の相互直通運転、空港とつなぐ高速バスの利便性向上が盛り込まれ、16年度計画からは幕張新都心地区の新駅整備も加えられ、現在は4項目が掲げられている。

新駅はJR京葉線海浜幕張-新習志野間に大会前の暫定開業を目指していた。新駅ができれば、海浜幕張駅とともに幕張メッセにアクセスでき、回遊性も向上する。だが、工事に6年かかることが判明し、大会に間に合わず、現在は24年ごろになる見込みとなっている。

旅客船は羽田空港(東京都大田区)などとJR千葉みなと駅(千葉市中央区)近くの港を結ぶ運航実験を16~17年に実施。計画には「検証結果を踏まえ、東京湾クルーズを実施する民間旅客事業者を誘致する」と書かれているが、海辺活性化推進課は「実験結果から採算が確保できないことがわかった」。それでも今月中に民間事業者を募集する予定だが、同課は旅客船ではなく(港周辺を回る)観覧船の応募しかないのではないかとみる。

高速バスは千葉市内-成田空港間(現在1日51~53往復)、同市内-羽田空港間(同83往復)を増便させるため、市内の発着所を整備するとしている。だが、交通政策課によると、バス会社との協議は始めておらず、「現時点で調整に入っていないと間に合わないかもしれない」(諏訪武雄課長)。大会組織委員会から来場者数の見込みなどが示されないことが協議に入れない理由という。

JR京葉線・りんかい線の相互直通運転は競技会場が集中し選手村も置かれる東京の臨海部と幕張メッセを直接結ぶためだが、市がJR東日本千葉支社に7月に出した要望書への回答は今もないまま。直通運転は、県が02年、市が05年から継続的に要望しているが、同支社広報は取材に「関係自治体や関係企業などと調整しているが、大がかりで一筋縄ではいかない」と話す。

こうした現状について、千葉市五輪・パラリンピック調整課の鈴木啓之課長補佐は取材に「個別のことは各担当課に任せている。私からは何も言えない」と答えた。その後、各担当課に取材した内容を伝えると、「19年度計画に記載する内容は再検討しないといけない。関係機関と連携してスピード感を持って準備を進めていきたい」と話した。

市議会地方創生・五輪・パラリンピック調査特別委員会委員の近藤千鶴子市議(公明党)は「危機感もなく、本当に任せて大丈夫か不安だ。絵に描いた餅では意味がない。足元から計画を見直して確実にできることを逆算してやっていかないといけない」と市の姿勢を批判。同委員の野本信正市議(共産党)は「検証なしで進めており、粗っぽい。できないものをあたかもできるように並べるだけでは、何のために担当課があるのかわからない。何ができ、どう進めるか見極めが必要だ」と指摘した。