「専守防衛に戦車不要」は大間違い 

「専守防衛に戦車不要」は大間違い 陸上自衛隊に戦車が必要なわかりやすい理由

 

現代日本で戦車が戦う場面とは…?
陸上自衛隊は2018(平成30)年3月末現在において、約640両の戦車を保有しています。ちなみに、日本の周辺諸国の戦車保有数は、ロシアが約2800両、お隣韓国は約2300両、中国は約9000両となっています(平成30年度「防衛白書」より、保管状態となっているものを除く)。数字だけを一概に比較できるものではありませんが、周辺国に比べ少ないことは明らかで、さらに陸自の戦車の数は削減傾向にもあります。

 

そもそも、なぜ日本が戦車を持つ必要があるのでしょうか。

戦車とは、高い攻撃力と防御力を備えた陸戦兵器です。世界の多くの軍隊が運用していて、陸上自衛隊では3種類の戦車、すなわち74式、90式、10式の戦車を保持しています。

装軌式(いわゆるキャタピラー)の足回りで、不整地を走破しつつ、敵の防御線を撃ち壊し、機動打撃を与えるその姿は、敵にしてみれば恐ろしく、味方にしてみれば頼もしい存在です。

しかし、日本という国を見てみると、海に囲まれた島国であって、どこかと陸地で繋がっている訳ではありません。加えて、専守防衛を掲げ、他国に攻め入ることを想定していません。

よって他国との戦争において陸上自衛隊の戦車が戦闘する場面というのは、おおむね、敵がすでに制海権(一定海域を排他的に使用できる能力)や制空権(同じく一定空域を排他的に使用できる能力)を握り、敵地上部隊がわが国への上陸を開始したあとという状況くらいではないかという見方もあります(もちろん、制海権や制空権の争いを繰り広げているなかで、敵の地上部隊が日本に上陸を強行してくる場合も考えられます)。海と空の防衛が崩壊寸前で、もはや敗戦間近に思えますが、それでも本当に、戦車を持つ必要があるのでしょうか。

陸上自衛隊の96式装輪装甲車。装甲車といっても、戦車からの攻撃を受けたらひとたまりもない(矢作真弓撮影)。
もしも日本が戦車を持っていなかったら?
もし、自衛隊が戦車を持っておらず、装甲車程度の装備品しか持っていない場合、日本を侵略しようとする敵は、装甲車を撃破することができる程度の戦車を持ってくるでしょう。そうなった場合、自衛隊の部隊は、敵の戦車に太刀打ちすることができなくなってしまい、応援を呼んだとしても、その応援部隊が駆けつけた頃には、すでに全滅しているかもしれません。

逆に、自衛隊が戦車を持っている場合、敵は自衛隊が持つ戦車よりも高性能な戦車を持ってくるでしょう。つまり、自衛隊の戦車の能力が高くなれば、敵は更に強力な戦車を開発せざるを得なくなり、結果としてそれが抑止力として働くということです。

たとえば、無施錠の家に忍び込むのは簡単ですが、鍵が掛かっていれば、その鍵を破る道具が必要になります。警備会社のセキュリティシステムが入っていれば、更に高度なセキュリティ解除技術が必要になり、目標の家に侵入することがより難しくなります。そうなれば、侵入そのものを諦めるという判断も生まれるでしょう。抑止力とは、そのようにして発生し、機能するものなのです。

新しい装備を開発し続けることも抑止力に
陸上自衛隊は高度な射撃統制装置と、軽量化された車体で機動性に優れる10式戦車を導入しました。2017(平成29)年からは、それらの能力を更に向上させた、装輪タイプの16式機動戦闘車も配備されています。こうした能力の向上は、敵に対しても、様々な能力の向上を強制させるもので、日本が独自の戦闘車両を作らなくなってしまったら、周辺国による侵略の脅威に常に晒されることになるでしょう。

そして、そのように抑止力を働かせているにもかかわらず、それでもいざ侵略を受けたとなったならば、戦闘に勝たなくてはなりません。戦闘とは、どちらか強いほうが勝ちます。兵器や兵士の能力、兵站(補給)と通信ネットワークの維持など、様々な要素を考慮して、総合的に実現可能な作戦を実行して戦闘に勝つ必要があります。

こうした理由から、専守防衛に徹する陸上自衛隊でも、高い戦闘力を持つ戦車が必要になってくるのです。

現代の国際社会において、他国が日本を侵略するというのは、あり得ないわけではありません。よって、そうした動きを抑止し、日本が平和と独立を維持し続けるためにも、戦車をはじめとした様々な防衛装備品の充実を図ることが必要になります。

日本侵略を狙う敵から舐められないためにも、日本には戦車が必要なのです。