中国、米国に「航行の自由作戦」中止要求 安保対話で溝
米中両政府は9日、ワシントンで米中閣僚級による外交・安全保障対話を開いた。楊潔篪(ヤンチエチー)共産党政治局員は会合後の共同記者会見で「『航行の自由』の名の下、(米国が)軍事行動を取ることは許されない」と述べ、米国が南シナ海で展開する「航行の自由作戦」の中止を要求した。月末にアルゼンチンで予定される米中首脳会談を前に、通商問題以外でも溝の深さが改めて浮き彫りとなった。
会合には米側からポンペオ国務長官、マティス国防長官、中国側から楊氏、魏鳳和(ウェイフォンホー)国務委員兼国防相が参加した。会合後のポンペオ氏の説明によると、米側は中国が軍事拠点化を進める南シナ海問題に懸念を表明したうえで、中国が台湾との国交断絶を関係国に働きかけている問題や、ウイグル族ら中国国内の弾圧の問題を指摘した。
これに対し、中国側は激しく反発。楊氏の説明によると、中国側は会合で南シナ海問題について「中国は疑う余地のない主権を有している」と主張し、逆に米側に「頻繁に軍艦を派遣し、中国の主権と安全を損なう行為を中止するべきだ」と反論した。
台湾問題についても、魏氏が会見で「台湾が中国から分裂しようとするなら、我々はかつて米国が南北戦争でしたように、いかなる犠牲を払ってでも祖国統一を維持する」と強調した。楊氏はウイグル族をめぐる問題についても、「中国の内政であり外国に干渉する権利はない。現在の新疆社会は安定し、経済発展は良好で各民族が調和している。米国が事実を尊重し、中国内政に干渉しないよう望む」と語った。
一方、ポンペオ氏は「米国は冷戦や中国への封じ込め政策を追求していない」と述べ、攻撃的な言動は控えた。また、両国はお互いの誤解に基づくリスクを減らすため、意思疎通を図る仕組みを改善することの重要性では一致した。
ただし、米中関係は最近、「新冷戦」と言われるほど、外交・軍事関係が険悪化している。ペンス副大統領は10月初旬、中国の脅威を前面に打ち出す演説をした。
米中間の外交・安保対話の開催は昨年6月に続き、2回目。当初は10月中旬に北京で開かれる予定だったが、南シナ海などでの軍事的な緊張の高まりを受け、中止になった経緯がある。