仏抗議デモ全土拡大、マクロン政権最大の危機に
フランス全土に燃料税引き上げへの抗議デモが広がり、エマニュエル・マクロン(Emmanuel Macron)大統領(40)は就任以来、最大の危機に直面している。警察当局によると、ここ数十年で最悪規模の被害をもたらした1日の首都パリのデモでは412人が拘束され、現在も363人が勾留されている。
マクロン氏は地球温暖化対策であるとして燃料税引き上げを撤回する考えがないことを強調している一方、抗議デモが地方都市や郊外を中心に広がったことから、3日になって政府は妥協策提案の可能性を示唆。エドゥアール・フィリップ(Edouard Philippe)首相は閣僚や主要野党の党首らと会談し、対策を協議した。
マクロン氏は2017年5月、雇用創出目的の企業投資の促進を柱とした財界寄りの政策を訴え大統領に就任。その後すぐに起業家や高所得者向けの減税を推し進めた。
燃料価格の上昇に対する抗議デモ「黄色いベスト(Yellow Vest)」運動の参加者は来年1月に予定されている燃料税引き上げの延期だけでなく、多くが最低賃金や年金の引き上げも求めている。
また、3日には抗議はフランス全土の学校100校あまりに波及。生徒たちが学校を封鎖するなどして大学の入試制度改革に抗議した。
抗議運動をめぐっては年末の書き入れ時に買い物客の足が遠のく可能性もあると実業界から懸念の声が上がっているほか、ブリュノ・ルメール(Bruno Le Maire)経済・財務相によると抗議デモが始まって以降、ホテルの予約率は15~20%ほど落ち込んでいる。
一方、抗議デモを支持してきた極右政党「国民連合(RN)」のマリーヌ・ルペン(Marine Le Pen)党首はツイッター(Twitter)で、フィリップ首相との会談で「マクロン氏が選択した戦略としての対立に終止符を打つ」よう求めたと投稿した。
一連のデモでは一部の参加者が暴徒化し、警察隊を襲撃したり車に火を付けたりするなどしたため非常事態が宣言される可能性も出たが、内務省のローラン・ヌニェス(Laurent Nunez)副大臣は3日、現時点でその考えはないと明らかにした。
フランスでは過去、大規模な抗議デモによって政権が政策の転換に追い込まれるという事態が繰り返されてきたが、ルメール経済相は低所得世帯を中心とする消費低迷の解決策について欧州でも高水準にあるフランスの税率を早急に引き下げることだとした一方、「そのためには公共支出の削減が急務だ」と強調した。