朝鮮半島で戦争が起きれば、中国とロシアはアメリカの敵になる

朝鮮半島で戦争が起きれば、中国とロシアはアメリカの敵になる

 

<北朝鮮との緊張を勝手にエスカレートさせるトランプ米政権。3月までに戦争が起こってもおかしくないと言われる状況に、中国とロシアが対米で手を組んだ>
朝鮮半島で戦争が起こった場合を想定し、アメリカへの攻撃計画を進めている可能性があることが、2人の中国軍関係者の発言で明らかになった。
中国人民解放軍南京軍区の元副司令官(中将)の王洪光(ワン・ホンコアン)は12月16日、「今から来年3月までの間に、いつ朝鮮半島で戦争が起こってもおかしくない」と警告した。中国共産党機関紙人民日報系の環球時報が北京で主催した会議での発言だ。環球時報は翌日、王の発言を大々的に報じ、軍事専門家の宋忠平(ソン・チョンピン)のコメントを付け加えた。「中国に脅威を与えるなら、アメリカとの武力衝突もあり得る」
「中国は、朝鮮半島有事に備える必要がある。そのためには、中国東北部に動員をかけるべきだ」と王は16日の会議で言った。「戦争を始めるためでなく、防御的な意味での動員だ」

人民解放軍のロケット軍の前身である「第2砲兵」に所属していた宋は、環球時報の取材に対し、中国の主権を米軍が侵した場合に報復するための危機管理計画も「防御」目的に含まれる、と語った。
どこまでも拡大しかねない戦火
宋はまた別の取材で、中国とロシアが12月11日に北京で行ったミサイル防衛演習について、ドナルド・トランプ米大統領が命じる中ロ両国への軍事攻撃を想定したものだと言った。トランプは今年1月の就任以降、北朝鮮の金正恩朝鮮労働党委員長との対立を激化させる一方だ。トランプ政権は北朝鮮の核保有を認めない立場だが、北朝鮮は金政権崩壊を狙うアメリカの攻撃から自衛するために核が不可欠だと主張している。中国とロシアはこれまで、北朝鮮による核・ミサイルの開発を非難するアメリカに同調してきたが、アジア太平洋地域に米軍の影響力が拡大することには断固反対だ。
「中ロが合同演習を行う場合の仮想敵国は、中ロにとって本物の脅威となる弾道ミサイルと巡航ミサイルの両方を保有するアメリカだ」と、宋は香港英字紙サウス・チャイナ・モーニング・ポストに語った。「中国とロシアには、今回の合同ミサイル防衛演習を戦略的な対米抑止に利用したい思惑があった」
韓国に配備された米軍の終末高高度防衛ミサイル(THAAD)は、迎撃用から攻撃用に簡単に転換できるとみられており、何としても撤去させたい気持ちは中ロ共通だ。

 

米軍は9月、予定していた6基のTHAADの韓国配備を完了した。米国防総省は、北朝鮮のミサイル攻撃から同盟国である韓国を防衛するためにTHAADが必要との立場だが、中国とロシアは自国の国家安全保障上の脅威になるとして配備に反対してきた。しかし、北朝鮮への軍事的圧力を強めるトランプは、情勢が緊迫する朝鮮半島周辺に空母や戦略爆撃機を続々と派遣し、軍事演習も大幅に増やすなどして、中国とロシアを激怒させた。
1950年代初頭、建国間もない北朝鮮と韓国の間で朝鮮戦争が勃発した時、中国とロシア(旧ソ連)は共産主義国である北朝鮮軍を、アメリカをはじめとする国連軍は韓国軍をそれぞれ支援した。3年に及ぶ戦争には、米ソ冷戦における最初の代理戦争という側面もあった。1953年に休戦協定が締結され、北緯38度線を休戦ラインとして、南北軍事境界線に沿った「非武装地帯(DMZ)」が設定された。和平協定はいまだに締結されていない。
国連に制裁を科されても、金は父や祖父の代から引き継いだ核開発を一段と加速させている。中国の習近平国家主席とロシアのウラジーミル・プーチン大統領は、自国の軍事力と政治的影響力を世界に拡大させるため、歴史的な軍備増強を行っている。トランプは12月18日に発表した「米国第一」主義に基づく国家安全保障戦略のなかで、核武装した北朝鮮を「ならず者国家」と非難。中国とロシアについても「アメリカの安全や繁栄を脅かそうとしている」と言って対抗姿勢を匂わせた。