(朝鮮日報日本語版) 馬息嶺スキー場めぐり北が韓国猛非難、海外からは制裁違反の声

(朝鮮日報日本語版) 馬息嶺スキー場めぐり北が韓国猛非難、海外からは制裁違反の声

1/21(日) 23:30配信

北朝鮮は20日から21日にかけて、宣伝メディアを動員して韓国政府・メディアへの非難を繰り返した。北朝鮮の平昌冬季五輪への参加と馬息嶺スキー場での南北合同訓練などをめぐる対北朝鮮制裁違反の指摘、人権侵害の指摘についての不満をぶちまける内容だ。韓国政府が対北制裁を維持するとの方針を示したことについては「くだらない話」、メディアの批判に対しては「汚物入れ」などとあからさまな表現を使って非難を展開した。北朝鮮の五輪参加を口実に、韓国を国際的な対北制裁の枠組みから引き離し、対北制裁・圧力をめぐる国際社会の協力体制を揺さぶろうとする「本音」を表した格好だ。

■北朝鮮、韓国メディアの報道を猛非難

北朝鮮の朝鮮中央通信は20日付の記事で「南朝鮮(韓国)当局者の妄言(ぼうげん)と共に『対北制裁違反』などというくだらない話が飛び交っている」と韓国を非難した。さらに、韓国側が「対北制裁違反という議論が発生しないようにする」「国連・米国など国際社会と緊密に協力する」と表明したことについても批判した。同通信は、韓国メディアが北朝鮮代表団の滞在費支援、船舶での移動の許可、高官の訪韓などを「対北制裁違反の恐れ」と指摘したことに反発。その上で「北南(南北)関係改善のともしびを消したくないのなら立場を明確にせよ」と主張した。

北朝鮮が、20日に予定していた「芸術団」関係の視察団の韓国派遣を直前に取りやめた理由が「対北制裁」にあったことを明言したようなものだ。韓国政府筋は「北朝鮮は韓国政府に対し、『韓国の望み通りに平昌五輪に参加して興行を助けてやるんだから、今度は韓国側が制裁解除で報いよ』というメッセージを送っている』との見方を示した。「平昌五輪を通じた南北関係改善」に全力投球している文在寅(ムン・ジェイン)政権を北朝鮮が徹底的に利用しようとしているとの解釈も出ている。朝鮮中央通信がこの日、韓国政府の態度について「われわれ(北朝鮮)のおおらかな度量と主動的な措置によって用意された和解の劇的なムードを汚す怪異なこと」と指摘したのも、北朝鮮のこうした認識を反映したものといえる。

北朝鮮は、本紙を含む韓国メディアの南北会談関連の記事を非難する論評も相次いで公開し、記者の実名まで挙げてあからさまに非難した。とりわけ「金正恩(キム・ジョンウン)委員長の業績」と北朝鮮が主張する馬息嶺スキー場に関する批判には敏感な反応を示した。朝鮮労働党の機関紙・労働新聞は「われわれが南側(韓国)の選手たちとの合同訓練のために提供した馬息嶺スキー場と葛麻空港(元山国際空港)について『老朽化した不十分な設備』『危険な場所』などと言いがかりをつけている」と反発した。

■国際社会は「対北制裁違反」を懸念

しかし国際社会からは、北朝鮮の平昌五輪参加や馬息嶺スキー場での南北合同訓練をめぐり「対北制裁違反」を懸念する声が相次いでいる。米国のラジオ放送「ボイス・オブ・アメリカ(VOA)」はこの日、デニス・ワイルダー元米国家安全保障会議(NSC)アジア上級部長の話として「韓国政府は米国や北朝鮮に対し、韓国が(対北)制裁に反対するといういかなるシグナルも送らないよう注意すべき」とした上で「馬息嶺スキー場は韓国の選手たちが行くべきではない場所」と指摘した。米北朝鮮人権委員会のグレッグ・スカラテュー事務総長も「強制労働に代表される馬息嶺スキー場に韓国の選手を派遣するのは北朝鮮の反人道的犯罪を擁護するおろかな行為になり得る」と懸念を示した。さらに「金正恩氏の業績の偶像化に利用される恐れがある」とも指摘した。

米国の対北制裁専門家、ジョシュア・スタントン弁護士は21日、ツイッターに「平壌の計画は戦争や占領をせずに韓国から金をゆすり、フィンランド化することだ」と書き込んだ。「フィンランド化」とは、弱小国が隣接する大国の機嫌を伺いつつ自国の国益を譲歩すること」を指す。スタントン弁護士はさらに「韓国政府の当局者たちが『平和目的』と言ってメディアを統制するかどうかを見れば、北朝鮮の計画通りになるかが分かるだろう」と指摘した。