英戦略研「ミリタリー・バランス2018」発表

揺らぐ米空軍の優位 中国、新型空対空ミサイル実戦配備へ 英戦略研「ミリタリー・バランス2018」発表

英国の有力シンクタンク国際戦略研究所(IISS)は14日、世界の軍事情勢を分析した報告書「ミリタリー・バランス2018」を発表した。中国が新型長距離空対空ミサイル「PL15」を開発し、2018年に実戦配備するなどロシアとともに空軍力を米国と対等レベルに急速に強化している。同研究所は「冷戦崩壊以降、米国とその同盟国が当たり前に支配してきた空の優位性が揺らぐ」と警告している。
旧ソ連やロシアの技術を導入して武器製造してきた中国は、国防費を継続的に増やして独自の研究・開発・製造で急速に進歩を遂げ、軍の近代化を進めている。2017年に中国が公式発表した国防費だけでも1505億ドルで日本の460億ドルの約3倍だ。
中国空軍は、17年に航空宇宙分野で限定された国しか開発できない高性能の短距離空対空ミサイルPL10を導入したが、同研究所は「18年の早い時期に新型長距離空対空ミサイルPL15を実戦配備するだろう」と指摘した。

 

射程約300キロ、全長6メートル近いミサイルで、配備されると戦闘機のように迅速に動けない空中給油機や早期警戒管制機(AWACS)が標的となる。このため米空軍のカーライル司令官は、「PL15は深刻な脅威」と警戒。中国の軍拡が、米国の国防力を増強させる要因となっている。
また中国が独自に開発した第5世代ステルス戦闘機、殲(J)20を配備させた。これまでステルス戦闘機で武装する能力を持っていたのは米国と同盟国だけだった。同研究所は「最新長距離空対空ミサイルとステルス機配備を受け、東シナ海や南シナ海の海洋権益拡大に向けた中国軍の活発化が懸念される」と分析した。
ロシアも資金投入してソ連末期から中座していた空対空ミサイルの開発を再興。1982年に開発を始めた中距離ミサイルR77は、ソ連崩壊で量産を停止していたが、約30年ぶりにロシア軍がシリアでスホイ35に搭載した。
また80年代から開発をしながら予算不足で中断していた長距離ミサイルR37も21世紀になって開発を再開、2016年にミグ31に搭載されているのが確認された。

中国のPL15に次ぐ長い射程でAWACSを遠距離から撃ち落とす狙い。これまで自由に飛行できた空域も、安全ではなくなり、米国が南シナ海で実施する「航行の自由」作戦への影響も懸念される。
同研究所は、「中国はロシアの技術を踏襲、欧米に対抗できるように両国が協力して開発を進めている」と分析。「2020年半ばまでに中国はさらに高性能の長距離空対空ミサイルを開発する。開発した先端兵器をアフリカなどに売却しており、世界の安全保障環境が一変する恐れがある。米国と同盟国は空軍の戦略、技術のみならず航空宇宙技術開発の見直しまで迫られる」と警告している。