APECの舞台裏で攻防 防衛ラインの第2列島線めぐり日米豪と中国
17日にアジア太平洋経済協力会議(APEC)首脳会議が開幕したパプアニューギニア(PNG)。その舞台裏では日米豪と中国の攻防が本格化している。中国が南シナ海に続き、島嶼(とうしょ)国が浮かぶ南太平洋でも軍事拠点を構築する動きに日米豪が歯止めをかける構図で、防衛ラインの第2列島線をめぐる攻防でもある。
APEC会場で首脳を演奏でもてなすのはPNG軍の軍楽隊だ。楽器初心者ばかりだったが、陸上自衛隊中央音楽隊が3年がかりで育成した。自衛隊による太平洋島嶼国への能力構築支援の橋頭堡(きょうとうほ)だった。
能力構築支援は相手国と信頼関係を築き、レベルを引き上げることが重要。その一環でAPECを前にPNG軍とフィジー軍の工兵らを勝田駐屯地(茨城県)に招き、人道支援と災害救援のノウハウを伝えた。
一方、中国はAPECに向けPNGで道路や橋の整備を支援。PNGには多額の経済援助も行い、フィジーへの援助額は豪州を上回る。巨大経済圏構想「一帯一路」に基づき地域で存在感を高めようとしている。
中国が太平洋島嶼国を取り込むのは「海軍の太平洋進出に向けた拠点構築の狙いがある」(自衛隊OB)ためだ。中国は台湾海峡などでの有事の際、九州-台湾-フィリピンを結ぶ第1列島線の西側を支配下に置き、小笠原諸島-グアム-PNGを結ぶ第2列島線より西側に米軍の空母を近づけないことを想定。PNGは要衝に位置する。
政府高官は「中国はPNGの港湾を開発し、海軍艦艇の補給拠点にしようとしている」と指摘。中国がバヌアツに軍事拠点を建設する計画も浮上している。
米議会の諮問機関は今月14日に公表した年次報告書で中国軍が第2列島線の内側で米軍に対抗する能力を持ったとの見方も示した。
こうした動向に最も神経をとがらせているのが豪州だ。モリソン首相は8日、太平洋島嶼国との共同訓練計画を発表し、中国に対抗姿勢を示した。豪軍は来年、米軍とPNGで施設整備の能力構築支援を行う方針で自衛隊も歩調を合わせ関与を強める。