北海道震度7、「山津波」対策が課題

北海道震度7、「山津波」対策が課題

シリーズ「災害列島日本」です。1か月前に起きた北海道の地震で、最も多くの犠牲者が出た厚真町では、死亡した36人全員が津波のように押し寄せてきた土砂崩れで命を落としました。この「山の津波」への対策が新たな課題となっています。

「駆けつけて見に来たとき、匂いがした。独特の匂いがした」(厚真町 漁師・木戸嘉則さん)

北海道厚真町の漁師・木戸嘉則さんです。変わり果てた町の様子を見て、小学生の時に先生から教わった「山津波」のことを思い出したと言います。

「『山が泣くよ、音がするよ、すぐ逃げなさい』と先生に言われた。何か出来ることがあればと駆けつけたが、僕の力では及びもつかない悲しさが湧いてきた」(木戸嘉則さん)

先月6日の地震で震度7を観測した厚真町。犠牲となった36人全員が土砂崩れに巻き込まれ、命を落としました。

京都大学・防災研究所が作成したシミュレーションCGです。19人が亡くなった吉野地区では、土砂崩れは時速50キロの速さで押し寄せ、ふもとの集落にはわずか6秒ほどで到達。その高さは6メートルにも及び、地震の揺れが収まる前に一瞬にして集落を飲み込んでいったとみられます。

「木が生えている地面のすぐ下、非常に浅い部分で土砂崩れが起きているのがわかります」(記者)

土砂崩れが発生したのは、地表から浅い部分の「火山灰層」でした。粒子が細かく、水分を含みやすいため、地震で崩れて「泥流化」して、「土砂災害警戒区域」に指定されていない場所でも大きな被害が出ました。

「今回、比較的斜面のこう配が緩い地域でも崩れているので、地震動が相当大きかった」(室蘭工大大学院〔土木工学〕 木幡行宏教授)

さらに専門家は、地震による「山津波」からの避難の難しさをこう指摘します。
「海溝型地震は津波から逃げる時間があるが、直下型の場合は(山津波から)逃げる手立てがない。北海道150年の歴史で初めてなので、今後もこのような場所は出てくる」(室蘭工大大学院〔土木工学〕 木幡行宏教授)

地震による「山津波」にどう対策を取ればいいのか、北海道の各自治体は新たな課題に直面しています。