松戸市
<ゼロ戦>個人宅の資料館で公開 機体名は「報国-515」
太平洋・ソロモン諸島のガダルカナル島で見つかった零式艦上戦闘機(ゼロ戦)の残骸が海を渡り、千葉県松戸市六実の個人宅の庭に作られた資料館で公開されている。後部胴体や右主翼がきれいに残っており、塗装や戦闘機名の標記が当時の状態のまま確認できる。公開している陸上自衛官、中村泰三さん(50)は「当時の航空技術を正確に伝える貴重な資料。戦時中の時代背景に思いをはせるきっかけにしてほしい」と話している。【加藤昌平】
20平方メートルほどの資料館に公開されているのはゼロ戦21型の断裂した後部胴体、右主翼、左水平尾翼、同じ場所で見つかった別の機体の主脚など。昨年3月ごろ、ガダルカナル島のジャングルで発見されたもので、オーストラリアの戦闘機愛好家の下に運び込まれた。
中村さんは2001年、たまたま訪れた河口湖自動車博物館・飛行館(山梨県鳴沢村)で目にしたゼロ戦の復元機に感動し、同館などで計器の復元などを手伝うようになっていた。昨年10月、ガダルカナル島で見つかった機体について愛好家から聞き、「日本国内で当時の状態のまま残すべきだ」と機体の引き取りを決意。中村さんの知人で戦時中の広島県呉市の庶民の暮らしを描いたアニメ映画「この世界の片隅に」の片渕須直監督が機体の持ち主になることを名乗り出て、同11月にオーストラリアから日本へ運ばれ、中村さんの自宅で保管、展示することになった。
機体の所属部隊は不明だが、後部胴体には「報国-515(広島県産報呉支部号)」と機体名が記されていた。中村さんが当時の新聞記事を調べたところ製造の経緯がわかり、呉市の産業報国会員が提供した資金によって1942年3月31日に製造されたものと判明した。残骸に残された製造番号や当時の資料から、この機体が墜落した理由についても調べている。
「残された機体からゼロ戦の歴史や、目的に応じて改造されてきた経過が分かる」と中村さん。片渕監督も「残骸から当時の機体の運用の状況を知りたい」と話しているという。ゼロ戦を巡る歴史や技術を広く伝えるため、月1回、10人限定で無料で一般公開している。他の博物館への貸し出しも考えている。中村さんは「製造会社の社風によってゼロ戦の部品や技術に違いがあり、魅力的。展示をみて戦争について考えてほしい」と話す。