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2500億円も投じるディズニーシー拡張の「隠れた狙い」とは…

ディズニーリゾート(TDR、千葉県浦安市)を運営するオリエンタルランド(OLC)は6月、2500億円を投じる「大規模拡張プロジェクト」を発表した。世界的に見ても人気が高いTDRでは、その人気ゆえに起きる混雑が、顧客満足度の低下を引き起こし、最大の経営課題となっている。今回のプロジェクトは、拡張によって、物理的な混雑緩和を進めるのが大きな狙いだが、さらに「隠れた狙い」があることも浮かび上がってきた。

プロジェクト発表から1週間後の6月22日朝、羽田空港内の格納庫にOLCの上西京一郎社長の姿があった。提携関係にある日本航空と協力したTDR開園35周年記念の特別塗装機「JALセレブレーションエクスプレス」のお披露目イベントに登場するためだ。上西氏は「特別機に乗って、全国からTDRに来ていただきたい」とアピールした。

そして、イベント終了後、産経新聞の取材に応じた。

「ゲスト(来場者)の皆さんが、今回のプロジェクトを歓迎してくれていることが最もうれしい」と強調。プロジェクト公表以降、来場者からプロジェクトのことで声をかけられることもあるという。ネガティブな意見はほとんどなかったことからプロジェクトへの自信を強め、「確信あり」と笑顔を見せた。

今回の拡張プロジェクトをめぐっては、ディズニーランド(TDL)、ディズニーシー(TDS)に続く第3テーマパークの可能性もささやかれていたが、開けてみれば、実際にはTDSの拡張に落ち着いた。

それでも、平成13年のシー開業時に投じた3350億円に次ぐ巨額投資の計画だ。

具体的には、TDLとTDSに隣接する駐車場10万平方メートルを転用し、新たなアトラクションなどを新設する。これによってTDSは約2割広がることになる。

現在、TDLとTDSの敷地面積はほぼ同じだが、TDSには中央部に大きな“海”があるため、実質的な敷地は狭い。このため、今回の拡張がTDSの顧客満足度の向上につながると決断した。

そして、隠れた狙いというのが、TDSの特性の“軌道修正”だ。

上西氏はこう解説する。

「TDSは海や冒険をテーマに作ったパークだ。その結果、スリルのあるアトラクションも多い」という。つまり、来場者もTDLに比べ、大人が中心になっている。

今回、TDSの拡張によって新設されるのは、ディズニー映画「アナと雪の女王」「塔の上のラプンツェル」「ピーター・パン」をテーマにした4つのアトラクション。これらのアトラクションでは絶叫マシンは想定しない。

これにより、TDSの来場者ターゲットを、子供を含めたファミリー層、特に祖父母、親、子供の3世代が楽しめるように軌道修正したのだ。

同時にTDSにファミリー層を取り込むことで、TDLの混雑解消にもつなげる。

OLCは、TDR全体の来場者数は公表しているものの、TDLとTDSの来場者内訳は公表していない。ただ、TDLの来場者がTDSを大きく上回っているのは明白。TDLが全世代を対象にしているのに対し、TDSは「大人のテーマパーク」の特性が強いからだ。

今回の拡張と新アトラクション新設で、TDSを全世代向けのテーマパークとし、結果的にTDLの来場者比率が下がり、混雑問題の緩和にもつながるというのだ。

それだけに、今回のプロジェクトは単なる拡張ではなく、「事実上、第3のテーマパークを作るのと変わらないビックプロジェクト」(上西氏)という。

OLCの加賀見俊夫会長はプロジェクト発表の記者会見で、「これまで見たことのないテーマパークをつくる新しいステージに入った」と強調していた。そのとき、記者はその意味を理解できなかったが、隠れた狙いが浮き彫りになったことで、TDRが大きく変わろうとしていることを実感し始めている。