船橋市    「食物繊維」若い世代で不足

船橋市

「食物繊維」若い世代で不足、20代は目標の7割 どんな食材に多い?

 

便通をよくするなど健康維持に欠かせない栄養成分の食物繊維。摂取で病気の予防効果も期待できる成分だが、若い世代で目標量に達しない人が多い。どんな食材に多いかを知り、毎日の食事でプラスする工夫をしよう。(平沢裕子)

◆食育でアピール

「海藻が好きな人は?」

「はいはい!」

夏見台幼稚園・保育園(千葉県船橋市)で11月上旬に開催された食育イベント。参加した33人の園児や保護者らを前に、鳥居徹也園長が胃や腸の形がアップリケされたエプロンを使って、食べ物と腸内細菌、便の関係を説明していた。

同園では定期的に保護者もいっしょに料理を作る食育イベントを開催。3年前から力を入れているのが、食物繊維を摂取してもらうための工夫だ。

海藻は食物繊維が多く含まれる食材の一つ。この日は、園児と保護者がいっしょにうどんの麺を手作りした後、ひじきやわかめなどの海藻と野菜をふんだんに使った料理とともに、うどんにも海藻をたっぷりのせて食べた。

鳥居園長は「腸内細菌の研究が進み、私たちの健康に腸が深くかかわっていることが明らかになってきた。腸の健康のためには食物繊維をしっかり取ることが大事だが、何を食べればいいか分からない保護者も多い。食育イベントを通じて、どんなものを食べればいいか知ってもらえれば」と話す。

◆20代は目標量の7割

日本人の食事摂取基準(平成27年)では、1日の食事から取る食物繊維の目標量を、18~69歳では男性20グラム以上、女性18グラム以上としている。

しかし、国民健康・栄養調査(29年)によると、目標量に達しているのは70代女性だけ。若いほど摂取が少なく、20代では男女とも目標量の約7割しか摂取していなかった。

その一因といえるのが海藻類を食べる人が減っていることだ。農林水産省によると、海藻類の1人当たりの1日消費量は、ピークだった平成6年には4・2グラムあったが、28年は2・5グラムと40%減となっている。

食物繊維には水溶性と不溶性の2種類あるが、海藻の食物繊維は水溶性。便を軟らかくして、するっと排泄(はいせつ)させるのに役立つとされる他、血圧やLDLコレステロール値を改善させ心筋梗塞などの循環器疾患の予防も期待できる。

全国のスーパーマーケット360店舗を対象に、モズク酢とメカブの購入者を分析した調査では、どちらも約7割が40代以上の女性で、40歳以下の購入は男女合わせて1~2割程度だった。

海藻メーカー、カネリョウ(熊本県宇土市)商品企画部課長で、栄養学博士の吉積一真さんは「水溶性食物繊維は海藻のネバネバの成分。健康のために、若い人にも毎日の食事で食べてほしいのですが…」と残念がる。

◆洋食化も一因か

海藻類の摂取減少の理由として、和洋女子大家政学部健康栄養学科の多賀昌樹准教授は「食事の洋食化」を挙げる。

確かに、朝食でワカメのみそ汁を飲んだり昆布(こんぶ)の煮染めを食べたりといった食習慣は今は昔。若い人では居酒屋でワカメ酢や海藻サラダを食べる程度かもしれない。

ただし、食物繊維の摂取減少は海藻類だけが原因ではない。

多賀准教授は「野菜や豆類の摂取が減ったことが大きい。『サラダで野菜を食べている』と思っている人は多いが、ゴボウなど繊維質の多い野菜は取れていないのが現状」と指摘する。その上で、「若い世代では男女ともに料理をする時間のない人が増えている。それだけに、食物繊維を多く含む食品を手軽に食べられるようにした商品の開発が期待される」と話している。