船橋市 育児中に親世帯と同居は得か損か 識者が“盲点”アドバイス
「背に腹は代えられない。義母に頼るしかない」
神奈川県在住だった聡子さん(39=仮名)は、2人目の息子が生まれたばかりの時、都内の義母の家に引っ越した。
オムツ代は2人で毎月2万円近く、ミルク代も数千円、肌着や服も大人より高く、それにベビーカー3万円、チャイルドシート3万円、ベビー用ベッド1万円……毎月の支出が7万円余りも増えていたから、同居すれば金銭面でも楽になると期待していた。
ところが、アテが大きく外れた。第一に、保育園に入園できなかったこと。入園のポイント制度で、祖父母との同居は減点されるためだ。
泣きわめく赤ちゃんと3歳になったやんちゃな息子が一日中家にいる。義母もストレスがたまってきたのか、「子供の寝顔しか見たことないなんて、愛情が伝わらないわよ」などと嫌みを言われ続け、とうとう「働いているのだから、少しは食費などを出すべき」と月7万円を請求された。
「出張ばかりで夫は役に立たないどころか、義母の味方。出費はかえって増えた」と聡子さん。
確かに、親世帯との同居にはメリットもある。助成金を出す自治体も増えてきていて、東京・墨田区では子育て世帯が親世帯と同居または近居する場合、住宅を取得する費用の一部を助成(中古30万円、新築50万円)。賃貸でも千葉・船橋市のように仲介手数料を10万円ほど助成してくれる自治体もある。
北海道に住む実の祖母と同居した杏子さん(43=仮名)は「引っ越し費用などは行政の助成金を利用し、最初はトクしたと思った」が、これは一時的な収入でしかなかった。結局、祖母の介護まで担うことに……。生活経済ジャーナリストの柏木理佳氏がこう言う。
「同居・近居は食費や家賃など出費が減ると思いがちですが、国民健康保険料は地域によって計算方法が異なるため、年間10万円以上も差が出る。同じ家に住んでいても世帯主を分けるか分けないかで、社会保険料の金額も変わり、損することも多い。先に親世帯の年収や支出などをよく調べ、聞きづらくても食費などを出してくれるかどうかなどを確認し、総合的に判断してから、引っ越した方がいいでしょう」
杏子さんのように、育児と介護のダブルケアに直面している人は25万人いる(2016年内閣府調べ)。親世帯に頼りすぎると、“倍返し”なんて羽目になりかねない。慎重に見極めた方がよさそうだ。