船橋市 新名神建設、 遺族「安全口だけか」

船橋市     新名神建設、相次ぐ事故 遺族「安全口だけか」

神戸市北区の新名神高速道路の建設現場で2016年4月、橋桁が落下し作業員10人が死傷した事故で、兵庫県警は16日、業務上過失致死傷の疑いで、元請けの「横河ブリッジ」(千葉県船橋市)の現場責任者だった男性4人を書類送検したと発表した。新名神建設を巡っては事故後も兵庫県猪名川町や大阪府の建設現場で作業員が死傷する事故が続発しており、遺族は神戸新聞社の取材に「命を奪った事故が教訓とされず、状況は事故前と全く変わっていない。安全第一は口だけと感じる」と憤る。(村上晃宏、杉山雅崇)

 

「『やっと一歩進んだ』という気持ち」。事故で亡くなった田中幸栄(ゆきひさ)さん=当時(37)=の母初見さん(60)=大阪市港区=が書類送検について思いを打ち明けた。「ようやく事故原因の解明に向けた道のりが始まる。裁判になれば、4人は正直に話してほしい」

娘1人と息子2人を溺愛していた幸栄さん。将来は会社を起こし、兄弟3人で仕事をする夢を持っていたという。初見さんは「私たちの心が晴れることはない。子どもたちも写真のパパを見るしかないのだから」と無念を語った。

新名神高速道路の建設現場で相次ぐ事故には「橋桁の事故が教訓になっていない。西日本高速道路会社や施工会社が現場の声を無視しているから事故が起きているのではないか」と指摘。「もう二度と同じ事故が起きないよう、気を引き締め直して安全第一を徹底してほしい」と訴えた。

横河ブリッジの広報担当者は「書類送検の事実を重く受け止め、関係者にご迷惑とご心配を掛けたことを深くおわびする。引き続き安全施工と事故の再発防止に取り組みたい」とコメント。西日本高速道路の広報担当者は「重大事故の再発防止に向け、受発注者一体となって安全管理に取り組む」と話した。

県警によると、書類送検された男性4人は、当時の現場所長(44)と現場副所長(44)のほか、46歳と39歳の工事責任者。県警は「悪質な過失」として刑事処分相当の意見を付けたとみられる。

4人の送検容疑は、支柱の沈下を認知した後も安全対策を検討せず、事故防止の指示を怠るなどの過失から橋桁を落下させ、作業員2人を死亡させ、8人に重傷を負わせた疑い。調べに対し、39歳の男性は否認し、他の3人は「危険性を認知していた」などと容疑を認めているという。