千葉市
【数字から見えるちば】上場企業49社、全国10位 新たなイノベーターの出現期待
□ちばぎん総研調査部主任研究員・下出直樹
平成29年は株式市場が堅調に推移したこともあり、国内で新たに株式を公開した(IPO)企業は、28年を6社上回る87社となった(東証1部・2部、マザース、ジャスダックの合計)。県内では、11月にプレカット木材の加工販売を手掛けるシー・エス・ランバー(千葉市花見川区)が東証ジャスダックに、12月には、居酒屋をはじめとした飲食事業を展開する一家ダイニングプロジェクト(市川市)が東証マザースに上場を果たした。
この2社を含めて、県内で株式を公開している企業(市場は同じ)は49社で全国10位と、GDP規模の全国6位を下回る順位にとどまっている。
県内企業のIPOは24年以来、実に5年ぶり。全国的にIPOの増加基調が続く中で、新規公開数の全国シェアは低迷している。その最大の原因は、産業構造の特性にある。
株式公開企業の業種を県別にみると、県内企業は、卸・小売業やサービス業に偏っており、製造業の比率が低い。これに対して東京都では、情報・通信業やサービス業が多く、サービス業の中身も多岐にわたる。
埼玉県と神奈川県は、製造業の割合が多い。両県とも大手自動車会社の製造拠点を擁している中で自動車部品等の上場会社が多いうえ、電気機械がスマートフォン向けや車載向けの部品の生産を伸ばし、上場を果たすケースも目立つ。
これに対して本県の製造業は、製鉄や石油化学など素材産業のウエートが高く、埼玉・神奈川のような加工組立産業のクラスター(産業集積)がないことが、製造業の上場が少ない背景となっている。また、本県は全体的に、資金面で大規模調達の必要がない大手企業の系列会社が少なくないことも上場企業数に影響しているとみられる。
次世代産業の育成に向け県内自治体も手をこまねいてはいない。県が東葛テクノプラザを拠点に医療機器の開発を標榜しているほか、柏市が東大キャンパスに設置予定のAI研究拠点を軸にAI、バイオ、ヘルスケア関連企業などの集積を目指している。国家戦略特区の枠組みを利用して千葉市(ドローン関連)、成田市(先端医療)なども新たな産業誘致に向けて動き始めている。
増大する需要をうまく取り込むことを含め、首都圏の一角に位置する恩恵を生かした新たなイノベーターが早く現れることを期待している。