千葉市   新形態のトランクルーム拡大

千葉市    新形態のトランクルーム拡大

 

趣味の大事な収集品の保管や家族の思い出の品の保管。都市部を中心に需要が拡大し、成長を続けるトランクルーム業界。千葉県などを中心に主に室内型のレンタル収納スペース「マイキューブ」を展開する日本ビルドライフ(千葉市)は、ICTを活用した無人案内システムを開発するなどの独自色を打ち出し、利用者確保と囲い込みを図っている。

◆異業種からの参入

「元々は建築や店舗内装の仕事を手がけていたのですが、賃貸業ができないか常々考えていて」。同社の有賀一郎社長(59)はこう話す。当時のトランクルームといえば、今でも郊外の幹線道路沿いでみかける大型コンテナを利用したものが中心。有賀社長も平成12年の事業開始当初はそうしたトランクルームの展開をしていたが、大きな問題にぶつかったという。

17年ごろ、耐震偽装問題が大きな社会問題となり、コンテナを積んだだけのトランクルームの営業はグレーゾーンとなったことだ。有賀社長はコンテナタイプのトランクルームではなく、ビルやマンションといった賃貸物件の中で間仕切りしたトランクルームができないか模索。室内型中心のトランクルームの展開に切り替え、現在は一般的なトランクルームを10カ所と、バイク専用のトランクルームを展開するに至るなど順調に経営を拡大してきている。

◆遠隔操作で効率化

店舗の拡大に伴って課題となってきたのがトラブルへの対応だ。たとえば、内覧を希望する人から連絡があっても、有賀社長やスタッフが別の店舗で対応していたりすれば、顧客を待たせることになる。一方で、各トランクルームにスタッフなどを配置すればその問題は解消できるが、人件費がかさみ、賃料が高くなってしまい、利用希望者に敬遠されかねない。

そこで考えたのがICTを利活用した遠隔制御サービスの導入だ。専用アプリをダウンロードしたスマートフォンやパソコンの画面上で、映像を見ながら簡単な内覧への対応が可能になった。

また、遠隔操作でカメラの画像を見ながらトランクルームの解錠なども行え、利用者がオートロックなのに鍵を荷物などと一緒に置き忘れてしまうインロックへの対応も迅速になった。

利用希望者と調整がつかず成約が見送られるケースも多い中、「利用を希望するお客さまとのマッチングがしやすくなり、成約率が2倍以上になった」と有賀社長はいう。

カメラで24時間監視していることから、事故などが発生した際の状況確認が容易になったり、成約率の向上や関連コストの削減で費用負担を抑えられるようにもなり、利用者へ還元できているという。

遠隔制御システムの開発は画期的で、日本社会全体が人手不足、労働力不足に悩む中、同業他社からも導入についての問い合わせが相次いでいるという。

思い出の品や書類、趣味のグッズや収集品などさまざまなものを保管するトランクルーム。都市部の集合住宅など収納が少ない地域を中心に、今後も伸びる需要を取り込み、成長する努力を続けていく。

■有賀一郎社長インタビュー

--トランクルーム事業に参入したきっかけは

「もともと建築や店舗内装の仕事をやっていたので畑違いだが、現場でコンテナを積んでいたりして、なにか賃貸業ができないかなと考えていた。これがちょうど20年前ぐらいで、内装の会社を廃業してレンタルルームの会社を設立した」

--コンテナを改装したレンタルルーム中心にしなかったのは

「2005年ごろ、耐震偽装問題があり、コンテナのレンタルルームの営業が不透明な時期があった。そうした経緯もあって、テナントの中で間仕切りしてできないかと考え、始めた。あの問題がなかったら今この仕事をしていなかったかもしれない」

--テナント内に設けていることのメリットとは

「コンテナは湿度や温度がなかなか保てないが、室内型のトランクルームは空調もあるので衣服やカメラなどの機械類、書類を置く人もいる。今はネットで商売をしている人も多いので、そうした方の商品在庫の保管場所の活用も期待している」

--どういった方の利用が多いのか

「千葉県中心で住宅街の近くに展開してます。大手は主要駅近辺で法人向けに大規模だが、われわれは7~8割が個人のお客さま。年齢層は30代半ば~60代で子供が独立したが子供の思い出の物を捨てられない40~50代の方とかが多い」

--無人案内・遠隔制御システム「e-番頭」開発の経緯は

「店舗数が増えてきて、スタッフが頻繁にはいけなくなるなか、コストをかけず無人でタイムリーに案内できるものを作ろうと。内覧希望者や利用者のトラブルに迅速な対応が可能になって、その点がお客さまの満足度や成約率の向上にもつながっている」

(千葉総局 永田岳彦)

【無人案内システム「e-番頭」】

トランクルームに常時、スタッフを置くわけにもいかないが、トラブル発生時に利用者を待たせるわけにもいかない。こうした悩みを解消する画期的なシステムとして、注目が集まっているのが同社が平成28年ごろから一部店舗で導入している無人案内・遠隔制御システム「e-番頭」だ。トランクルームの入口や室内に設置しているカメラの映像をスマートフォンなどの画面上で確認できる=写真。鍵を置いたまま、室外に出てしまうインロックの連絡を利用者から通報があれば、遠隔操作で電子錠の解錠もできる。人件費の高騰などで注目されているといい、カメラ4台とシステムを月2万円程度のリース料で貸し出すことも視野にいれている。

【日本ビルドライフ】

▽本社=千葉市中央区千葉寺町973-17-101

▽設立=2000年3月

▽資本金=2000万円

▽従業員=5人

▽売上高=約7000万円(17年2月期)

▽事業内容=トランクルームの運営など