市川市
国家戦略特区の大学誘致「納得できず」 成田住民訴訟、原告側が控訴
国際医療福祉大学(本部・栃木県、高木邦格理事長)の誘致のために、千葉県成田市が40億円超の公金を支出したのは違法だとして、成田市の小泉一成市長を相手取り損害賠償を求めた成田住民訴訟2件について、千葉地方裁判所(阪本勝裁判長)は10月16日は「公益上の必要性が認められる」として原告の訴えを棄却した。
成田市は、2016年4月に同市公津の杜4丁目に開学した国際医療福祉大学看護学部・保健医療学部と、国家戦略特区の認定を受けて翌17年4月に開学した同医学部の校舎建設用地として、いずれも京成電鉄(株)(本社・市川市)が所有していた土地をそれぞれ20億3800万円、22億7600万円で購入し、大学に無償貸与した。
原告側は、購入価格が京成電鉄と市側それぞれの鑑定価格の中間値をとり、市の鑑定価格をいずれも数億円上回っていることから不適正とし、鑑定依頼直前に行なわれた小泉市長と京成電鉄社長とのトップ会談(13年5月16日)での事前合意が疑われると主張。また、購入した土地の無償貸与にあたって諮問すべき市有地審議会を開いていない手続き上の問題があるとし、大学への補助金30億円の支出も含めて違法だとした。
判決の中で阪本裁判長はトップ会談について「事前合意の存在がうかがわれなくもない」としながらも事前合意を認めず、市有地審議会を開かなかったことも、市議会の議決がされていることから「手続き違反の程度は軽微」とし、いずれも原告側の主張を退けた。
判決後、千葉県庁内で記者会見した原告代理人の水野泰孝弁護士は「事前合意の存在が十分に疑われる事実経緯があり、価格交渉を裏付ける記録がないにもかかわらず、(裁判所が)トップ会談の当事者である小泉市長の尋問を採用せずに判断をしたことは納得できない。また、市有地審議会の役割を軽視し過ぎている」と指摘。原告も「成田市は巨額の公金を計約130億円も大学誘致のために注ぎ込み、歯止めが利かない状態。上の判断を仰ぎたい」と述べ、控訴の意向を示した。
国際医療福祉大学誘致をめぐっては、成田市が無償貸与する別の土地に建設される同大学附属病院に関する3件目の訴訟が係争中だ。次回は12月21日、千葉地裁で。