浦安市   横浜市の消防団スカウト策

浦安市   ヤクルトレディにディーラー 横浜市の消防団スカウト策

 

ヤクルトレディに医療関係者、自動車ディーラーの従業員…。多様な人材を消防団員に「スカウト」する横浜市の取り組みが軌道に乗っている。かつては自営業者が中心だった団員の担い手不足が全国的な課題となって久しいが、主に区ごとに20ある市内の各消防団と消防署が協力。個人的な人脈や行事などの機会を生かし、多方面に働き掛けている。公助の隙間を埋める地域防災の主役として消防団の役割が期待される中、他の自治体も工夫を凝らし始めている。

定数760人と横浜市内で最大規模の戸塚消防団は3年前、団員数が定数を満たす「充足率100%」を達成。現在も維持しており、その中では15人のヤクルトレディが活動の一翼を担っている。

「職住近接」の人が多く配達時にバイクなどで地域を回るため、地元に明るいという強みがある。活動できる時間は限定的であっても「救命方法を身に付け、地域の役に立ちたい」(50代女性)などとして、縁のなかった消防団の門をたたいた人が少なくない。

同消防団の広報担当が手掛けた活動PRの漫画やリーフレットも完成。11月からイベントなどで配り、さらなる担い手の発掘に努める予定だ。

南消防団(定数395人)も幅広い人材が活動を支えている。地元の佐藤病院に勤める看護師や理学療法士ら6人が仲間に加わり、同病院は9月、市内の医療機関では初の「消防団協力事業所」となった。

自動車ディーラーの従業員も複数入団しており、4月以降で40人ほどを新たに確保。南消防署は「地域貢献の一環として消防団に協力してくれる事業所が増えてきた。幅広い分野から人材を確保できれば、活動を補完しあえる」と手応えを感じており、充足率100%が視野に入ってきた。

女性団員の比率が約4割と高く、いち早く100%を達成した西消防団(定数230人)では、横浜みなとみらい保育園の保育士ら約10人が活動している。園には「子どもの命を守る日々の業務に生かせる」という発想があり、西消防署のイベントに園児が参加したことが入団を後押しした。

同保育園のように複数が入団するなどして認定された消防団協力事業所は市内に106。寺やホテル、自動車学校、スポーツクラブなど幅広い業種構成となっている。

横浜市以外でも新規団員の発掘に力を入れ、徐々に成果が出てきた自治体もある。

この1年で6人増えた川崎市は大規模災害時などに限定して活動する機能別団員の導入を検討。30人増の横須賀市は今春、定年を65歳に、入団可能な年齢を55歳未満にそれぞれ引き上げた。一方で、「学生の団員を積極的に確保する方策も考えていきたい」と今後を見据えている。

一方、11人減少した相模原市は定年制を敷いていないものの、「分団長などの役職任期が終わるタイミングで減ってしまう」傾向がある。14人の減だった大磯町は「企業や工場があまりないので、自営業者が減ると入団者の確保が難しい」と、小規模自治体に共通した悩みを挙げる。

秦野市も8人減ったが、今年9月には、消防士を志望する現役高校生が加わった。市は「若者の入団促進に向け、消防団の活動を知ってもらう取り組みを続ける必要がある」と受け止めている。