千葉市 <東京23区・政令市>NPO、12%の2138法人が休眠
◇毎日新聞調査 犯罪悪用も 制度改正必須
東京23区と全国20の政令指定都市にある1万7316の特定非営利活動法人(NPO法人)のうち、約12%に当たる2138法人が休眠状態であることが、毎日新聞の調べで判明した。専門家によると、休眠NPO法人に関する全国規模の調査は初めて。野放し状態のまま犯罪に悪用されている法人もあり、制度改正を求める声が上がる
休眠法人を巡っては、警視庁が今年6月、貸金業者から債務者に返還されるべき過払い金をだまし取った詐欺の疑いで実質運営者2人を逮捕した。休眠状態のNPO法人が売買されている実態も毎日新聞の報道で既に判明しており、このうち埼玉県の「ライフプラン」(解散)は、法人名義の口座が詐欺に悪用され、被害額は約1億円に達した。
NPO法を所管する内閣府によると、2015年度(16年3月末時点)の認証NPO法人は全国に5万866法人。毎日新聞はこのうち東京23区と政令市の計1万7316法人(全体の約34%)について、15年度の事業報告書などを入手し、活動実績や収入、支出を調べた。
休眠NPO法人には公的な定義がないため、非営利法人の組織評価をする一般財団法人「非営利組織評価センター」(東京)の山田泰久・業務執行理事の助言を基に、「活動実績のない」1184法人と、NPO法で義務づけられている「事業報告書などを提出していない」954法人の計2138法人を休眠状態とした。活動実績のない法人の約8割(910法人)は14年度も実績がなく、休眠状態が継続する傾向が浮かぶ。
休眠法人の割合が最高だったのは静岡市の約28%。千葉市約25%、北九州市約24%と続く。一方、広島市は約7%、さいたま市は約8%、川崎市は約9%、東京23区は約10%。これらは事業報告書の未提出法人に督促状を送る(さいたま市)など、所管する自治体の措置により休眠法人の増加に歯止めがかかっているとみられる。
休眠とは分類しなかったが実態不明の法人もある。235法人は事業報告書に「活動準備中」と記載していた。実際に活動していれば明記できるはずの「実施時期」や「実施場所」などの具体的記載がない法人も67あった。一方、活動実績に記載があるのに、収入(入金)も支出(出金)も「0」と記載している法人が439あった。無償で活動し収入がゼロであるNPO法人は実際にも多いとみられるが、事業内容に「研修所建設」などと記入しているのに支出がないなど、疑問のある法人も目立つ。
NPO法人を所管するのは各自治体だ。報告書が未提出の場合、NPO法は(1)過料を科す(2)認証を取り消すことができる--と定めるが、厳格に適用するかどうかは各自治体任せ。しかも「報告書さえ出せば、活動実績がなくても手が出せない。実態把握は難しく野放しだ」(首都圏の自治体の担当者)という。【向畑泰司、田中龍士、寺田剛】
◇解散促す制度改正を
NPO法人制度に詳しい熊谷則一弁護士(第二東京弁護士会)の話 休眠法人に関する大規模な調査は初めてで、活動実績のない法人の多さに驚いた。休眠状態で放置すればNPO法人の口座が不正利用されたり、不正会計に悪用されたりするなどの可能性があり、社会の害となり得る。行政が活動内容を把握するため、数年間活動実績のない法人には報告を求め、実態が休眠と分かれば解散を促すことができるよう制度を改めるべきだ。