船橋市 カタール断交
断交解消のための13要求からわかる関係各国の本音
6月23日、サウジなど4カ国はカタールに対して、断交を解くための13項目からなる要求を示しました。ちょっと長いですが、湾岸諸国の本音と対立の背景がよくわかる内容なので、すべての項目を紹介してみます。
1) イランとの外交関係の縮小、革命防衛軍関連の人々の追放、通商関係の制限
2) カタールにあるトルコ軍基地閉鎖
3) テロ組織とされているムスリム同胞団、IS(イスラム国)、アル・カイダ、シャーム解放機構(前ヌスラ戦線)、ヒズボッラーなどとの関係断絶
4) 国際的にテロリストと指定されている人物や団体への資金提供の禁止
5) テロリストに指定されている人物の引渡し、資産凍結、保護の禁止、情報提供
6) アル・ジャジーラの閉鎖
7) 他国への内政干渉の停止、4カ国の国内の反体制派との連絡の禁止、4カ国の国民に対するカタール国籍付与の禁止、国籍付与した人物の引き渡し
8) 過去数年間4か国がカタールの外交政策によって受けた被害の賠償金支払い
9) 2013年のリヤド合意および、2014年のリヤド追加合意の履行
10) カタールが過去に支援した反体制派および支援の種類に関する情報提供
11) カタールが直接・間接的に支援してきたメディアの閉鎖
12) これらの要求に対する10日以内の対応
13) 決められた月に各国への報告書の提出
(資料:中東かわら版 No.60 カタル:サウジ等4カ国がカタルに対し要求リストを提出)
13項目からなる要求のうち、最後の2項目は要求ではないので、実質的な要求は11項目です。一読して、これは履行不可能だなと感じてしまうと同時に、要求の内容は内政干渉だと思わずにはいられませんでした。相手に内政干渉を禁じておきながら、自らが内政干渉してしまうというパターンです。
アラブ民族は一つであるというパン・アラブ主義の名残ともいえるのですが、お互いに内政干渉しあうという、アラブ諸国間の政治における独特の国家の垣根の低さが見られます。これも、また、部外者にとってアラブ政治を、よけいに「わからないもの」にしている要素だといえるでしょう。
また、ここで興味深いのはトルコ軍の基地への言及です。カタールにトルコ軍の基地の閉鎖を要求しているということから、サウジなど湾岸諸国がイスラム主義を唱えるエルドアン大統領のトルコをどのようにみているのかが明らかになっています。それだけでなく、シリアでの内戦終結後に備えて、すでにいろいろと水面下で動きがあることも推測されます。
断交によるカタールの食糧危機に対して、トルコはすでに約200機の航空機で食料品を空輸し、さらに船一隻で支援をしているといわれています。トルコだけでなく、食料品や日用品の支援は、もちろん第一項目でやり玉に挙げられたイランも積極的に行なっていることは言うまでもありません。
要求への回答期限は7月初旬でしたが、カタールの回答は公式に明らかにされてはいませなん。カタールは水面下でクウェートなどの仲介を経て交渉しているようですが、要求を飲むつもりもなさそうです。サウジなどの4カ国の態度は少し軟化したらしいともいわれていますが、断交は依然として継続中です。
アメリカも事態の悪化を懸念して、7月10日に国務長官にカタールを訪問させましたが、これといった成果は挙げられませんでした。このような状況から、事態が長期化するのではないかというのが大半の見解のようです。カタールの断交が同じくイランと友好関係を築いているオマーンへも飛び火するのではないかとか、カタールは通貨防衛のために海外資産を売却せざるをえないのではないかとの悲観的な憶測が飛び交い始めています。